田舎暮らしをするにあたって、最終的に選択したのは新築を建てるということ。完成に至るまでは、とても長い道のりがありました。本記事だけではとても足りないので【秘境に家をつくろう】というシリーズ化して紹介していきたいと思います。
移住したのは、北アルプスを眺望できる高山市。
「せっかくなら雪をいただく山の連峰を望めるような、景色が開けた場所に暮らそう」
そう思い、移住後は市内をずいぶんとドライブしました。
当時、建築に関する法律など何も知らなかった僕と妻は「あそこいいんじゃない?」「いやいやこっちの方がいいでしょ」などと、勝手にあれこれ言っていました。今思えば、無邪気なものです。しかし色々と見ていくうちに、そんな簡単は話じゃないということが判明。
それらの問題をどうクリアして、最終的に今の土地を見つけたのか。
本記事では土地探しについて書いていきます。
どこにでも家を建てられる訳じゃなかった…
市内を巡るとある事実に気付くようになりました。ちょっと小高い所にあり、日当たりも見晴らしもいい場所の地目はすべて「農地(正確には田や畑)」であるということに。
そもそも地目とは、宅地や田、畑、山林、雑種地など、その土地の用途による区分を意味します。宅地や農地、山林は言葉通りのもので、雑種地はそれらに該当しない場合の土地を指します。これらは、許可を得ない限りその用途にしか使用することはできません。
「いいな〜、景色最高だな〜」と思うものは全て農地…。こりゃ困ったなと思っていましたが、後に農業委員会の許可を得られれば「地目変更」をできることが分かりました。
申請すれば「はい、オッケーです。そこに署名と捺印ね」なんて感じで出来るものと思っていたのですが、実際に農業委員会を訪れて聞いてみると、期待は見事に裏切られました。
「農地」とはいってもただの「農地」と「※農業振興地域」という種類があり、どちらも「農家でない者は売買不可能」、そして「農業振興地域」の地目変更は相当な理由がなければ許可は下りないというものでした。
※農業振興地域=ざっくりいうと、国などの補助金を投入し、農地として整備したもの。優良な農地を確保し、農業を推進させるための土地。農業委員会の審査は1年に1度しかなく、地目変更はとてもハードルが高い。
土地探しをしていた当時は「こんなんあるから大変なんだけど」などと思いもしましたが、確かにどこでも家を作れるとなると農村が機能しなくなると納得しました。
「日本一の面積を誇る市なんだから(東京都とほぼ同じ面積)、家を建てる場所なんていっぱいあるでしょ?」なんて考えを恥ずかしながら持っていましたが、考えてみれば面積の約92%は森林なので、人が暮らせる場所は限られているんですよね。
そう、どこにでも好き勝手に建てられる訳ではなかったのです。
土地を発見! 宅地?雑種地?農地? どれを選んだのか?
ありがたいことに、ほんっとにいい人が多く暮らしていた移住先の集落。
住めば住むほどに、この集落に住み続けたいと思うようになりました。
そこで、他の集落での中古物件や宅地探しはキャンセル。同じ集落でなんとか探そうとトライしました。
中古物件はありましたが、ご縁はなし。
宅地や雑種地もありましたが、ご縁はなし。
むむむ。
残るは、やっぱり「農地」しかない…。
そんな時です。
現代的な方法ですが、ネットで見つけました。
それがコチラです。
遠近感がおかしく広さが伝わりずらいのですが、奥のビニールハウス手前までが該当する土地です。360度に渡って民家は見えず、唯一見えるのは空と山のみ。地元の人でもこの場所を知らない人が多く、まさに秘境感に溢れる場所です。
ここの地目は農地。しかも農業振興地域ではない農地。
広さは3,500㎡、言い換えれば1,050坪。
金額は200万円!
もう一度、書きます200万円!
桁は間違っていません。坪換算すると坪約2,000円です(安っ!)。
銀座の公示地価の平均が坪約9,000万円。
東京23区の宅地の平均地価格が坪約160万円。
高山市の宅地の平均価格が坪約15万円。
そして見つけた土地は坪2,000円というのですから、衝撃の安さです。
ですが、ここは「農地」。
もちろん僕らは農家ではないので、売買はできません。
ですが、安い。すこぶる安い。
同じ集落内だし、なんとかできるなら、なんとかしたい。
善は急げ。不動産屋さんに電話し、農家でなくとも農地に家を建てる方法はないのか聞いてみました。
農地に家を建てる方法
既に書いた通り、農家でなければ「農地」は売買できません。
では、どうしたのか?
まず、宅地としたい部分を「文筆」して地目を「農地」から「宅地」へと用途変更すれば、購入できるということが分かったのです。
しかし3,500㎡もの面積の地目を変えるには、難しいことが分かりました。
高山市では、
「土地の区画形質の変更にあたって500㎡を超える場合は、市の条例で許認可申請をしなければならない」
ということだったのです。そこでスムーズに手続きを進められるように500㎡以下、一応余裕を持って490㎡のみを文筆し、宅地化することにしました。
となると、売買ができない残りの農地3,010㎡はどうなるのか?という問題が残ります。そこでざっくりではありますが、以下を土地の売買契約に含めてもらいました。
- 僕が農家になった際は、無条件で名義変更が可能。
- 本登記はできないので(農家じゃないから)、仮登記の状態で維持する。
- 農地部分の固定資産税は僕が支払う
なので、法律上完全に「私の土地です」とは言えないものの、自由に使い続けられるようにしました。土地の所有者も文筆した部分だけ売るよりもまとめて処分したかったということもあったのです。ちなみに農家の子どもだったら、比較的簡単に手続きができるようです。よく「親の土地に家を作るんだよね」とかっていうのはだいたいそうです。羨ましい限りですね。
土地は見つかった。「さあ、家を建てよう!」の、前に超大事なこと
見つけた土地は、車が行き交うメインの道路から山の中へと続く一本道の先にありました。もちろん生活に必要となる、水も電気もガスもありません。
話は前後しますが、契約の前にこれらの問題をクリアしなければ、ただ畑の中に家を建てられる権利を買うだけになってしまいます。そこで、土地を契約する前に全てをクリアする必要がありました。
・地盤調査
地元の人に話を聞いていくと、その土地はかつて田んぼだった。そしてその上に、水害で発生した土砂を数m埋めたててできた畑ということ。家を建てる最初の基本は地盤調査のようで、考えてみればそうですよね。軟弱地盤じゃ困りますから。
そして土地の持ち主に交渉しました。
「地盤が固ければ買います」と。
快諾を得て、地盤調査会社に依頼。
結果、土砂で埋め立てているだけあって、固い地盤。
むしろ、そんじょそこらの地盤より固いので、まったく問題なしでした。
・上水、下水はどうする?
「地盤オッケーだし、じゃあ買うか!」
「いやいや、ちょっと待って、水は?」
「水道屋に頼んだらいいんじゃない?」
「そりゃそうね。そしたらまずは市の水道局に確認してみよう!」
で、市の水道局へ。
こんなやりとりがあり、市の水道を引くのは却下。
そこで、土地の持ち主に再交渉しました。
「水道引くのは高額すぎるので、井戸を掘ろうと思うんですけど、掘ってみていいですか? 飲める水が出たら買います」
まるで買う買う詐欺みたいでしたが、再度快諾いただき、井戸業者に依頼することに。
こんなやりとりがあり、井戸を掘ってもらうことに。
こんな感じで菅を継ぎ足し継ぎ足し掘ること2日。
そして30m近く掘った結果・・・。
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でたーーーーーーっ!
そうです、水が出たでたのです!
しかも奇跡的に不純物のない透き通った色で、匂いもまったくしない澄んだ水が。
その時の感動たるや。
ただただ「うぉー!」と言っていたことを覚えています。
念のため水質調査も検査機関に依頼。
結果もばっちりで、問題なく生活に使用できる水でした。
ちなみに下水は、浄化槽という装置を家に設置することでクリアしました。
これで地盤も水も問題なし。残るは電気とガスです。
ガスはそもそもプロパンガスなので配達なので問題なし。こういう時には都市ガスよりもプロパンガスの方がフットワークが軽いと感じます。
そして、電気は本道から1km以内であれば無料で中部電力が引いてくれるので問題なしということが判明。
そうです。これですべての問題がクリア。
そしてやっとのことで土地の持ち主に「買います!」と言うことができました。
※ちなみに値引きを求めたらあっさり断れました…。
そんな、矢先…。
まだお金の問題が残っていました。
これにて【秘境に家をつくろう〜土地探し編〜】は終了。
次は【秘境に家をつくろう〜家の設計編〜】にいきます。
to be continued